手取り20万円で、毎月5万円足りないとします。給与前払いサービスを手数料6%で使うと、翌月の入金は14万7千円。同じ生活を続ければ翌月の不足は5万3千円に増えます。これを6か月続けると前払い額は6万6,911円、当初の1.34倍です。手数料の累計は20,926円。金利ではなく、翌月の原資が減っていくことが問題の本体です。
6か月で前払い額が1.34倍になる
手取り20万円、毎月の不足5万円、手数料は前払い額の6%という前提で並べます。
| 回 | 前払い額 | 手数料 | 翌月の入金 |
|---|---|---|---|
| 1か月目 | 50,000円 | 3,000円 | 147,000円 |
| 2か月目 | 53,000円 | 3,180円 | 143,820円 |
| 3か月目 | 56,180円 | 3,371円 | 140,449円 |
| 4か月目 | 59,551円 | 3,573円 | 136,876円 |
| 5か月目 | 63,124円 | 3,787円 | 133,089円 |
| 6か月目 | 66,911円 | 4,015円 | 129,074円 |
生活に必要な額が毎月20万円のまま変わらないと仮定した場合の推移です。
6か月で前払い額は1.34倍、手数料の累計は20,926円になります。翌月に受け取る額は20万円から12万9千円へ、7万円以上落ちています。
なぜ膨らむのか
借入なら、返済が終われば元に戻ります。前払いはそうなりません。
前払いで受け取った5万円は、翌月の給与から差し引かれます。手数料の3,000円も引かれます。つまり翌月に手元に入るのは、本来の20万円から53,000円を引いた額です。生活に必要な額が変わらなければ、不足は5万円ではなく5万3,000円に増えています。
この増えた不足を、また前払いで埋める。すると翌々月はさらに増える。毎月の手数料は6%のまま変わらないのに、掛ける相手が毎月大きくなるため、金額は増え続けます。
借入との決定的な違いはここです。借入は元本が減っていけば利息も減りますが、前払いは翌月の原資そのものを先に削るため、放っておくと不足が拡大する方向にしか動きません。
止める方法は一つしかない
この連鎖を止めるには、どこかで1か月だけ前払いを使わない月をつくる必要があります。
ただし、その月は不足額をまるごと別の方法で埋めることになります。6か月目まで来ていれば、埋める額は6万6,911円です。始めた時点の5万円より大きくなっているため、遅れるほど止めにくくなります。
| 早い段階 | 止めるのに必要な額が小さく済みます。1か月目なら5万円です。 |
|---|---|
| 遅い段階 | 止めるのに必要な額が膨らみます。放置するほど不利です。 |
| 止められない場合 | 支出そのものを見直すか、公的な相談窓口に当たる段階です。 |
2回以上続けて使っている時点で、これは一時的な不足ではありません。収支の構造そのものが合っていないという合図です。
公的な貸付であれば、無利子または年1.5%程度で借りられる制度があります。決定まで数週間かかるため急場には向きませんが、連鎖を断つための一時金としては条件が違います。資金の種類ごとに上限と償還期間が違うため、月々の負担は公的融資の資金別の比較で確かめてください。
記録に残らないことの裏側
給与前払いは信用情報に登録されません。この点が有利に見えることがありますが、裏返しがあります。
| 審査に出ない | 他社の借入として扱われないため、住宅ローンなどの審査には表れません。 |
|---|---|
| 総量規制に入らない | 貸付ではないため、年収の3分の1の計算に算入されません。 |
| 歯止めがない | 枠の上限も件数の記録もないため、使い続けても外部から止まりません。 |
借入であれば、総量規制の枠に達した時点で借りられなくなります。前払いにはその上限がありません。記録に残らないということは、止める仕組みも働かないということです。
枠がどう計算されるかは総量規制にあります。前払いはその計算の外側にいます。
法律上は貸付ではない
手数料の水準が高くなりやすい理由は、法律の位置づけにあります。
給与前払いは、すでに労働によって発生した賃金を先に受け取る仕組みです。金銭を新規に貸し出す行為ではないので、貸付という区分には入りません。したがって利息制限法の上限も適用されず、手数料の水準に法的な天井がないことになります。
年18.0%という上限は貸金業者に課されたものです。前払いサービスの6%は年率ではなく1回あたりの率なので、同じ物差しでは比べられません。この点を年率に換算した数字は借入方法の比較で扱っています。
非常時払いという別の制度
手数料のかからない前払いが、法律で定められています。
労働基準法第25条は、出産、疾病、災害その他の非常の場合の費用に充てるために労働者が請求したときは、会社は支払期日の前であっても、すでに働いた分の賃金を支払わなければならないと定めています。会社の任意ではなく義務です。
| 対象になる事由 | 出産、疾病、災害、結婚、死亡、やむを得ない事由による1週間以上の帰郷など。 |
|---|---|
| 受け取れる額 | 請求の時点ですでに働いた日数分の賃金です。 |
| 手数料 | かかりません。法律にもとづく請求です。 |
該当する事由があるなら、外部のサービスを使う前にこちらを検討してください。請求先は勤務先で、総務や人事が窓口になります。
会社の制度と外部サービスの違い
同じ「前払い」でも、誰が運営しているかで条件が変わります。
| 会社独自の制度 | 就業規則に定められたもの。手数料が無料か低額のことがあります。 |
|---|---|
| 会社が導入した外部サービス | 事業者が運営し、手数料は利用者が負担します。 |
| 個人が申し込むサービス | 勤務先を通さないもの。条件が不透明な例があります。 |
三つ目には注意が必要です。給与の受取口座を指定させたり、身分証と勤務先の情報を求めたりする形が取られることがあり、実質的に高利の貸付にあたるとして行政が注意を促している類型があります。
まず就業規則を確認してください。会社の制度があるなら、条件はそちらのほうがよいのが通例です。
勤務先を通さないサービスで身分証や勤務先の情報を求められた場合は、相手が貸金業の登録を受けているかを確かめてください。登録の有無を先に照合する方法は正規の貸金業者にまとめています。
借入と比べるときの物差し
前払いと借入を比べるには、単位を揃える必要があります。
手数料6%は1回あたりの率です。給料日まで10日の前払いなら、10日で6%ということになります。これを年率に直すには36.5倍するので、年219.0%相当です。貸金業者の上限である年18.0%と並べれば、12倍以上の水準になります。
ただし、1回だけ使ってそこで終わるなら実額は小さく収まります。5万円に対して3,000円です。同じ5万円を年18.0%で30日借りれば740円なので、実額でも4倍ですが、金額としては数千円の差にとどまります。
問題になるのは、繰り返した場合です。前の項で見たとおり、繰り返すと元の額そのものが膨らみます。1回で終わるかどうかが判断の分かれ目になります。
札幌で相談できる先
前払いを繰り返している状態は、収支の問題として扱うほうが早く解決します。
| 勤務先の総務・人事 | 非常時払いや社内制度の有無を確認できます。 |
|---|---|
| 各区の社会福祉協議会 | 世帯の状況によっては公的な貸付が候補になります。 |
| 札幌市消費者センター | サービスの条件や取り立てに関する相談を受け付けています。 |
| 労働基準監督署 | 非常時払いの請求に応じてもらえない場合の相談先です。 |
いずれも費用はかかりません。札幌で使える手段全体は札幌でお金を借りるに並べています。
よくある質問
前払いを繰り返すとどうなりますか?
なぜ借入と違って膨らむのですか?
連鎖を止めるにはどうしますか?
手数料6%は年率ですか?
手数料のかからない前払いはありますか?
札幌ではどこに相談できますか?
札幌市の地図
社会福祉協議会は市内10区のすべてに置かれています。冬季は窓口の混み具合が変わるため、事前の電話が有効です。